第一部:第2話

商人だからこその
新発想

商人だからこその新発想

流通形態に革命を起こす。言葉にするととても戦略的ですが、創業者、奥地進にはそんな考えなどなかったはずです。単に繋ぎ目のない鋼板を供給してあげられれば、溶接の作業がいらずもっと便利になる。それを付加価値だとも考えず、他の商売人と差別化したかったというのが正直なところでしょう。ただ、その付加価値のためだけに小売業でありながら工場を建設したことはちょっとしたニュースで、中には揶揄する人もいたと聞きます。工場では、仕入れてきた長いコイル状の鉄を25mや50mの巻いた鋼板にすることで、その使途も上がり、納入先も一気に膨らんでいきました。けれど進は、一手間を加える加工の価値をさらに高めるために、ある秘策に打って出ます。それが、長尺の金属屋根分野への進出です。加工するための工場は、奥地に商業から工業に移っていくきっかけを与えたのです。
さて、それがどのように発展していくかは、次回、「プロダクトアウトの原点」でお話しましょう。

OKUJI HISTORY

1961年

平野工場竣工「スリット瓦材成型」の製造を開始

1960年代前半 松原第1工場、松原第2工場竣工 「ガードラス」の製造を開始